麻生の足跡

嘉穂劇場

麻生の足跡−地域とともに−
嘉穂劇場(後編)
 全国に残る芝居小屋で唯一、定期的に興行を行っている嘉穂劇場。2003年、集中豪雨で遠賀川が氾濫したことで壊滅的なダメージを受けましたが、「貴重な文化財として、また、生きた芝居小屋として、嘉穂劇場を守っていきたい」と、NPO法人となった嘉穂劇場を、嘉穂劇場復旧委員会が中心となってサポートし、再建することができたのです。
 今回は、前回に引き続きNPO法人嘉穂劇場の事務局長・伊藤真奈美さんと、麻生芳雄商事社長・木下政利さんの対談をお届けします。


木下:水害からやっとのことで復興して以降、嘉穂劇場さんは前にも増して「地域とのつながり」を大事にされているように感じます。復興記念行事ということで2005年から開催している「子どもキャンプ」も、地域ぐるみのイベントになっていますね。

伊藤:水害で大きな打撃を受けたときに、地域のみなさんをはじめ多くの方に応援していただいたし、支えていただきましたから。私たちにもなにか恩返しができないか、と考えてはじまったのが「子どもキャンプ」なんです。

木下:地域の子どもを育成していくうえで、こういう活動は重要だと思います。小学生のお子さんたち120名が、嘉穂劇場で一夜を過ごす――肝試しをやったり、まわり舞台を回してみたり、ともだちと一緒に桟敷で寝たりするのは、とても楽しい思い出になりますから。でも、運営はたいへんでしょう?

伊藤:そうですね。とても私たち劇場の人間だけでは実現できなかった企画です。子どもたちのリーダー役として近辺の大学生がボランティアで参加してくださったり、竹細工や紙ひこうきを教えにきてくださる方がいらしたり、地元の商店からはアイスやジュースを、食事の材料はスーパーASOさんからご提供いただいて……。みなさんのご協力があって、成り立っています。とってもありがたいことだと思っています。

木下:企画の段階で「子どもを集めてキャンプをやりたいと思っているけれど、食事をどうしたらいいか悩んでいるんです」とご相談をいただいて、「子どもたちも喜ぶし、駐車場でバーベキューをしたらどうでしょう。材料はこちらで出しますので」とご提案させていただいたんですよね。

伊藤:夜のバーベキューの肉や野菜、焼きそばも、翌朝の流しそうめんの麺や薬味も、ぜんぶご提供いただいているおかげで、子どもたちにおなかいっぱい食べてもらえています。

木下:バーベキューの様子を見に行ったことがありますが、子どもたちはみんな生き生きした顔をしていましたね。満面の笑顔で「ごちそうさまです」、「ありがとうございます」って言ってもらえて、私たちも「役に立ててよかったなぁ」と嬉しくなりました。

伊藤:「子どもキャンプ」に参加してくれた子どもたちは、そのあと劇場に興味を持ってくれているみたいです。保護者の方から、「ニュースで嘉穂劇場のことが流れていると、振り向いて見ています」というお話も聞きました。

木下:地元の文化財に興味を持つきっかけになるし、愛郷心というんでしょうか、自分が暮らす飯塚という町に対する意識も変わってきますからね。準備も運営もたいへんだと思いますが、これからも「子どもキャンプ」を続けていってください。

伊藤:はい。いつまでもみなさんに愛される嘉穂劇場を守っていきたいと思います。
嘉穂劇場
住所:飯塚市飯塚5-23
http://www.kahogekijyo.com/