麻生の足跡

九州の電気事業

麻生の足跡−地域とともに−
九州の電気事業(中編)
 太吉の電力事業におけるもうひとつの功績は、植林に尽力したことです。水力発電にとって水量は命綱ともいえる問題であり、いかにして水量の安定を図るかが悩みの種でもありました。そこで、太吉が提唱し、実行したのが水源地への植林です。
 森林は、雨として降った水を地中に溜め少しずつ川に流す「緑のダム」。いまでこそ広く知られたことですが、当時としては先見性に優れた発案であったと言えましょう。筑後川、大分川、玖珠川などの上流20か所にあわせて約42平方キロメートルの土地を購入し、杉をはじめ松、檜、その他雑木を計800万本あまり植林しています。また、一時に植林をしただけではなく「面積、本数ともに毎年増やしていこう」と計画を立て、実行したことも、画期的でした。

 九州水力電気は、太吉の興した昭和電灯(元・嘉穂電灯)、九州送電、九州電気軌道のほかにも延岡電気、九州共同火力発電など電気事業者7社、電鉄2社、電気化学の九州電気工業に出資。九州の電気事業の礎を築きました。
 第2次世界大戦前後の電力国家管理の強行によって、九州の電気事業者は日本発送電への設備出資と九州配電への統合を余儀なくされます。太吉の手がけた数々の電気事業も例に漏れず、日本発送電と九州配電に統合されましたが、戦後、九州のすべての電気事業を引き継いだ九州電力の発足時には、麻生太賀吉が会長に就任。安定的な電力供給へ向け、一役を担いました。

資料提供/九州電力