太宰府天満宮の境内が、本殿の奥にも続いていることをご存知でしょうか? 梅の木々が植えられた北神苑です。奥へと進んで行き当たる小高い山は、標高約830mの霊峰、「宝満山(ほうまんざん)」。
宝満山の山麓には「竈門神社(かまどじんじゃ/別名:宝満宮)」の下宮が、山頂の巨岩の上には上宮が建っています。玉依姫命(たまよりひめのみこと)、応神天皇(おうじんてんのう)、神功皇后(じんぐうこうごう)を祀った神社で、創建は奈良時代よりもさらに遡った白鳳時代。1300年以上もの長きにわたって信仰されてきた神社です。
太宰府天満宮の境内と竈門神社。距離的には近いのですが、行き来は容易ではありませんでした。宝満山をはさんだ位置関係にあるため、山裾をぐるりと迂回しなければならなかったのです。
昭和3(1928)年。太吉は天満宮の境内奥、宝満山の麓に隧道(トンネル)を掘らせ、寄進します。「竈門神社を参拝する人たちが、遠回りをせずに済むように」と考えたのです。人が通るためのものなのでさほど広くはありませんが、炭鉱で坑道を掘る技術を最大限に活かして貫通させたトンネルです。半円状ではなく上部がアーチ状に下部が垂直になっているのは、手作業で掘った証。赤レンガをガッシリと積み上げたトンネルは、ひじょうに堅牢で、平成17(2005)年3月20日に発生した最大震度6弱の福岡西方沖地震の際にもビクともしませんでした。「参拝者に事故があっては一大事」と、太宰府天満宮が強度の調査を依頼したところ「まったく問題なしと、返答があった」のです。
宝満宮 参拝隧道
通行自由