麻生泰のメッセージ

九州から日本を動かす! Move Japan forward from 九州! (87)
  • 著作紹介
  • バックナンバー
  • PDFファイル
 自分のライフワークの一つはH2E(H2:Hospital Management, Healthcare Network, E:Education)です。一つ目のHである病院経営に関しては、飯塚病院を経営して40年くらいになります。
 待ち時間の長さは、患者にとって苦痛です。「一日がかりの仕事」という皮肉も聞きます。私たちは米国シアトルにあるバージニアメイソン病院と改善活動の交流をしているのですが、その待合室の狭さには驚かされました。理由を尋ねると、「予約制で定刻通りに診療をするのに、なぜそんなに大きなスペースが要るのですか?」という感じでアッサリと返事がきました。日本では定刻より早めに行かないと待たされる、という思いを持ちます。また、国民皆保険という日本の医療保険制度の良さも手伝って、「ちょっとしたことでも早めに診察をしてもらったほうがいい」という病院へ行くことのスムーズさが拍車をかけているのだと思います。アメリカでは医療費が高いことが病院へ行くことへのブレーキになっているのでしょう。
 私は経営改善をもっと進めていくことで、医療の質と経営の安定の両立を実現したいと思っています。公立病院、公的病院の毎年の赤字額は7,000億円。それはすべて国の財政から補てんを受けます。民間病院である飯塚病院もある程度の補助金は頂いています。しかし、なぜ飯塚病院の半分の規模しかない東京都立の病院で、飯塚病院の100倍に近い40億円もの補助金が必要なのか。もっとマネジメントに力を入れていって欲しいと思います。
 病院経営にも、日本人が得意とする改善活動を導入し、日々の仕事を生産性の高いものにしていく工夫をしようという意欲が医療スタッフの中に芽生えることで大いに変わります。コストのみならず、時間効率の向上をはじめ、リスクの削減、医療の質の向上など、実に大きな変化が起こります。
飯塚病院では約1,600人の外来患者さんに日々薬を出しています。待ち時間ゼロを目指した活動をしており、まだこの高い目標は達成には至っていませんが、待ち時間1分以内の患者さんは5割にのぼっています。こうした工夫は本来、生産現場では日本の強みとしてトヨタやソニーなどで実践され、そこから世界のリーダーが生まれてきたのです。
 この日本人が保有する「改善を重ねることで患者(顧客)の満足度向上につながり、自分たちの仕事もやりやすくなるし、やりがいも感じられる」といった文化を病院経営に取り入れたいのです。こうした動きを導入して民間病院として成果を出しているので、ぜひ公的病院から膨大な赤字補てん額を削減する動きをしてもらいたいと、一納税者としても真剣に思っています。
 バージニアメイソン病院とはConference for Healthcare (CHC) という会議を毎年行っています。来る11月1日と2日に第7回目を経団連会館で行います。院長のカプラン氏は、16年間に及ぶ経営改善のなかで大きな赤字から見事に世界トップクラスにまで同病院を導いた方です。やはり、大事なのはリーダーシップとトップからの明確な指示・指導力だと思います。院長の心意気を皆さんに聞いてもらいたいと思います。
 また、10月19日には第28回TQM活動発表大会が飯塚で開催されます。毎年多くの見学者が院外から来られ、飯塚病院からヒントやエネルギーも持ち帰られています。今年も多くの方が全国から来られるのをお待ちしています。無料ですが、飯塚病院のホームページで事前登録が必要です。

2019.10.09

麻生 泰