麻生泰のメッセージ

九州から日本を動かす! Move Japan forward from 九州! (96)
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 少子高齢化が急速に進み、煮詰まっていく日本の市場。国の財政状況は、GDPの二倍の借金を抱えたまま改善が進んでいない。それ以上に問題なこの危機感無き泰平感。
 こうした現状を打破しなくてはという思いがこの「九州から日本を動かす」という使命のベースにあるのですが、厚い壁と思われた行政にも、以前に比べると少し動き出す可能性が出てきているのを私は感じています。
 明治維新、敗戦で大きな改革を実現し、今日の経済力を築いた日本はまた新たな黒船が来ないと変わらないのかという不安。省庁間の壁、そして役所内での壁の厚さから、行政改革がいかに難しいかについては長く言われてきました。それが少しずつ変化し、公立・公的病院の赤字補てんとして毎年7,000億円以上出されていた補助金が、経営改善を通して減額に向かっていることから、動き出そうというリーダー方が出ているのを私は感じています。
 鉄道が民営化され、経営改善の成果が立派に出ています。郵便や電信も大きく変化を遂げている中、国が運営して残っているのは教育と医療分野です。その中で民間と共存している公立・公的病院には大きな経営改善の可能性があります。公的機関の改革は非常に難しいうえに、厚生労働省、総務省、文部科学省という各々三つの省庁が総数で1,600もの公立・公的病院を管理しています。非常に構造的な難しさがここにあります。
 その中で、広島県では湯崎知事のもとで県立病院の改革が進んでいます。トヨタのカイゼン活動を病院経営に導入して赤字を一気に減らし、今や世界でも病院経営改善活動のリーダー的存在である、シアトルのバージニアメイソン病院へスタッフが見学に出かけてカイゼン活動を学んで帰国し、県立病院だけでなく広島県内の他の公的病院にもこの活動を拡大し、その成果が出始めています。東京都でも先日、8つの都立病院と、東京都保健医療公社が運営する6つの公社病院を次年度より単一の法人で管理していくことが発表されました。これも、財源の無駄をなくしていこうという動きの表れだと期待しています。
 私もバージニアメイソン病院には二度ほど見学に行きましたが、日本の製造業が国際競争で勝ち誇った、無理、無駄、ムラを無くして品質向上、コストダウンなどを築いたその手法を学び、導入しており、院内では日本語の「かんばん」という言葉が日常的に使われています。バージニアメイソン病院では院長を含め多くの幹部が、毎年かなりの日数を費やして名古屋のトヨタまで学びに来ています。日本の製造業が誇るこのカイゼン活動をアメリカの病院が取り入れ、それを今や私たち日本の医療スタッフが学んでいっています。医療の質の向上と経営の安定という二本柱を実績として出しているのです。
 こうした改善成果が出てきていることから、この動きが上手にリードされると、日本人が持つ改善への意識が病院経営にも導入される流れが起こるのではないかという期待感を持って、私は今年も動き出しています。飯塚病院のケースを見ても、看護師を中心としたスタッフの改善意欲、意識は非常に強いです。もっとリスクを減らす、無駄を削減して待ち時間を短縮できるという思いからの発想や提言が受け入れられる風土が院内に生まれ始めると、スタッフから実に多くの改善提案が出てきます。日本人は本来こうした経営参加、共通の目標に対する自発的な帰属意識の文化と言えるような、外国人には無いものを持っています。労働集約型産業であり、女性比率の高い病院。最近の霞が関の動きから、多くの改善余地を残している病院改革への着手に期待出来るよう、思い、願い、祈っています。

2020.02.20

麻生 泰