九州から日本を動かす!
Move Japan forward from 九州!
(184)競争力向上のヒント
2023年10月12日
九州から日本を動かす! Move Japan forward from 九州! (184)
日本の国土の7割は山林です。水は実に恵まれています。中国の様に水不足の問題はめったに起こりません。多くの農家では活用可能な農耕地に恵まれていますが、高齢となった離農者の耕作放棄地が増大することにより、中山間地の農畜産事業に適合可能な土地面積はこれからも拡大します。それは機械化推進による農業大型化のチャンスと言えます。農業が魅力的な事業であれば、大都会に集中する人口の分散化というのが地方都市の活性化、魅力強化に繋がります。
この考えによる牧畜業では、牧草地が自宅に隣接している必要はなく、30分くらいで車移動できれば良いのです。その地方の中心部に住み車通勤することで、都会的な便利さもある生活が、中山間地農家であっても享受できます。行政も中心部に住民が集まっていることでインフラ整備等のコスト削減にもなると思います。
この中山間地畜産事業の二つの魅力は収入増と労働の軽減です。放牧による肉牛育成、増産は輸出に繋がるはずです。日本産牛肉の需要はこれからもアジアを始め、欧米でも伸ばせるのではないかと思います。安心、安全、美味しい、値段も手ごろ、健康にも良さそう。こうした目に見えない競争力となるのは日本食品のブランド力、信用度は多くの先輩たちが築いてくれたものです。これをもっとフルに活用してアジアや欧米で伸ばす。輸出量は販売市場があり、力を入れる事で潜在需要は更に見込める事を示しています。九州農水産物直販株式会社※(1)の売り上げを見て強く感じます。
農業畜産業はしんどい仕事という一般的知見があります。しかし農研機構※(2)では多くの画期的な研究実験から、生産性向上や作業効率化の成果を出しています。毎回発表を聞くたび、「日本人はこの分野の技術力も凄いぞ」と感じます。ただ多少、研究者の為の研究かと思う取組みがある事は否めず、実験や研究の成果をもっと現場に教えて広めていく事が少々弱い印象です。
例えば、イチゴの輸出をした際、梱包材の強度が不十分であったため、香港に着いたイチゴがかなり痛んでいた。研究者が一段階優れた梱包箱を開発していたのに、使用する農家には適切に伝わっていなかった。また鹿児島では大問題となっている甘藷の基腐病、これも研究ではかなり効果が上がった対策手法が実証されていたのに、現場活用に半年、一年遅れているという事があるようです。良い情報を早く正確に発信する力があり、それを受け取る現場が活用しメリットを出すことで、はじめて国への貢献が果たせるのに、その伝達、浸透にムダな時間が存在していた等の問題がありました。しかし今こうした習慣、文化は変わりつつあります。
農研機構の研究は実にレベルが高く、日本の農業の競争力、そして海外からの信頼、期待はこれからも高まっていくと思います。
※1 九州農水産物直販株式会社(https://www.kyushu-amp.com/ )
※2 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(https://www.naro.go.jp/introduction/profile.html)
2023.10.12
麻生 泰